水産大学校を卒業後、兵庫県の水産研究機関の職員として業務を行いつつ、京都大学農学部で、海産大型浮遊珪藻の生活史と生態に関する研究で博士号を授与された。その後、国立研究開発法人 水産研究・教育研究機構に異動し、有毒有害赤潮藻の分子同定技術の開発、集団遺伝学解析、海産プランクトンのメタバーコーディングを中心に研究を進めてきた。次世代シーケンサーを用いたメタバーコーデイングは10年間くらいの経験があり、日本沿岸域を中心に、アジア沿岸、チリ沿岸、マリアナ海溝、黒海、バルト海など広く国際共同研究を実施している。
要旨
日本沿岸域において、各都道府県市の海洋研究機関が1970年代前半から、環境モニタリングを実施しており、動植物プランクトンのデータは蓄積されてきたが、優占種の情報がほとんどであり、レア種や微細な植物プランクトンの情報はほとんどない。次世代型と呼ばれるシーケンサーは、従来型シーケンサーの千倍~1千万倍の性能を発揮する。シーケンス革命の到来により、従来の形態情報を重視していたモニタリングのスタイルに加え、大量に得られるゲノム情報をフル活用した革新的なスタイルも導入していく必要がある。10年にわたり、ユニバーサルプライマーによる聚合酶链反应増幅と次世代シーケンサーを用いたメタバーコーディング解析を行い、日本国内外の異なる海洋生態系に生息する動植物プランクトンの出現種の情報を網羅的に記録することで、これまでになく詳細なレベルでの生物多様性比較、出現動態の解析を目標として研究を進めてきた。オホーツク海、瀬戸内海、八代海、鹿児島湾、西表島等の沿岸やサンゴ礁域などにおいて、週1.回~月1.回の間隔でメタゲノム解析による生物モニタリングを実践しており、データを蓄積してきた。今回は、ユニバーサルプライマーを用いた聚合酶链反应膨大な量のNGSデータの取り扱い、ユニバーサルプライマーの選定、種同定などの技術的な部分と、実際に天然海水サンプルを用いた解析やモニタリングの実例について解説し、海洋真核生物(プランクトン)のメタバーコーディング技術の成果について解説したい。
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