複雑な疾患の遺伝子構造の理解には,特定の疾患に関連する遺伝子バリアントを発見し,特性を解明することが極めて重要です。複雑な疾患はコモンバリアントによって特徴づけられることが多く,レアバリアントや低頻度のバリアントの要因については,ほとんど解明されていません。ゲノミクステクノロジーは,特定の多様な集団において,形質や疾患と相関するバリアントを同定するために,ゲノム全体にわたる遺伝子関連性の研究を可能にしています。
ハイスループットゲノムテクノロジーを用いた全ゲノム関連解析(GWAS)は疾患関連のバリアントを発見するために,多数の患者の全ゲノムを迅速にスキャンできます。これには一塩基多型(SNP)とコピー数多型(CNV)が含まれます。アレイを用いた大規模GWASは,遺伝子座の同定や疾患関連のコモンSNPバリアント検出に,効率的かつ費用対効果が高い手法です。しかし,アレイでは低頻度SNPバリアントの検出に限界があります。塩基単位の解像度で全ゲノムシーケンスすることにより,疾患に関連する可能性のあるコモンおよびレアバリアントの両方を同定できます。
GWASは,まだ多くの疾患や疾病に対して実施されているとはいえません。また,現在までのGWASの参加者は,その大半(79%)がヨーロッパ系です。ヨーロッパの人口は全世界の約16%に過ぎないので,より多様なGWASデータセットの必要性が認識されています。2人種や民族の多様性に加えて,さまざまな疾患の特定のサブグループの多様な疾患適応症についてもGWASを実施する必要があります。これは,どの遺伝子および遺伝子パスウェイが疾患のメカニズムと病因に関与しているのかを探る手がかりとなります。
広く用いられているGWASのケース——コントロール法で,疾患のあるグループ(ケース)と健康なグループ(コントロール),2つの大きなグループを比較し,以下の複雑な疾患のバリアントを同定することに成功しました。