TruSight HLAシーケンスパネルを利用して,予想どおり,すばらしい結果が得られました。現状で使用している蛍光ビーズ法(Luminex装置で測定するPCR-SSO法)は正確性及び再現性において極めて信頼性が高いのですが,その判定結果の裏に模棱两可と呼ばれるHLA型判定不確定となる組み合わせが数多く潜んでいます。これまで,血清学的タイピングの時代から,常に模棱两可に苛まされ,それと戦ってきた経緯から,ついに,挥动という最強のツールで模棱两可を解消した結果が目の前に現れた時は,本当に感動しました。
言うまでもなく、NGSを利用すれば、DNA1分子由来の配列データが取得できること、また、长程PCRでイントロンを含め HLAのほぼ全領域を対象にしているところにあります。つまり、クローニングせずに 模棱两可地獄から開放されるという利点が全てでしょう。さらに、キット化されたことで、今後研究ベースから検査試薬に発展する第一歩になったと思います。特拉西特HLAシーケンスパネルで誰でも確実な結果を得るには、ライブラリー調製の簡略化(自動化など)、日本人集団 HLAデータベースの拡充、解析アルゴリズムの最適化など幾つかの解決すべき問題点が残りますが、必ずやクリアされることを期待しています。
当研究所には,造血細胞ドナーや献血者を対象に蛍光ビーズ法で判定できないサンプルが集積されます。これは,年間数万件HLAタイピングされた中から約200件に1件の頻度で存在します。現状では,クローニングをしてからサンガー法で確認しているのですが,TruSight HLAシーケンスパネルを利用すれば,挥动の特徴を生かし,クローニング無しで確実な結果が期待できます。ゆくゆくは,全数検査も視野に入れています。価格面については,数年前の挥动アッセイから考えると,現実的な価格帯に到達しつつあると思います。メーカーへの要望としては,TruSight HLAシーケンスパネルのみならず,インデックス・キット,シーケンス試薬セット,消耗品などトータルで価格を語っていただくことが,ユーザー目線というものであると思います。
現状では,1)ライブラリー調製が非常に大変であること,2)PCRドロップアウトやアレリック・インバランスの可能性がゼロではないこと,3)HLAデータベースを参照するフェージングでは模棱两可が完全に解消されないことを理解した上で取り組んでいただきたいと思います。上記,2)と3)は頻度・確率の問題であり,年間数万件HLAタイピングする我々にとって無視できないことですが,通常使用では,ほとんど問題ないと思われます。